鬼の本

籠もれる鬼の重之妹

国立劇場でみた「安達原 一つ家の段」の元ネタとなっている黒塚の鬼女伝説。さらにその伝説の元はこの歌とのこと。

「みちのくの 安達ヶ原の黒塚に 鬼こもれりと 聞くはまことか」

この歌は平兼盛が源重之の妹達の美貌の噂に心動かされて贈ったものとされている。
重之は清和天皇の孫にあたる血筋、兼盛もまた光孝天皇の血をひく。ともに和歌に秀でて十六歌仙の一人に数えられた著名人。両方に通じるのは高貴な血ながら、時の流れで地方に流浪したまま一生を終え、名を残すのには自身の天賦の歌才によってしかなかったという点。

兄と共に「春ごとに忘られにける埋木」にもひとしいその妹を〈鬼〉と読んだ兼盛の心情を馬場あき子は「類似した運命を歩む女の、心奥深く眠っている共鳴をよびさますための合い言葉的雰囲気を持っているようにさえ思える」
「貧寒たる現実に侵されず保っている血の誇り、塔のように岐立する反世俗の矜持、流離のうちにも保ってきたそれら魂の美しさを〈鬼〉と呼ぶことは、ほのかな自嘲をまじえた合い言葉でもあり、互いの生き様を照応したうときの無上の賛辞でもある。」

と「鬼の研究」に書いておられる。
元々そういった背景にあった歌がいつのころからか安達ヶ原で夜な夜な人を食らう鬼女伝説に置き換わったという。

ああ、鬼ってなんて魅力的なんでしょ。
上にあげた馬場あき子の流麗な言葉、なんど読んでも味わい深いです。

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2008.9月国立劇場文楽公演「奥州安達原」

鬼ファンとしては必見の今月の文楽でした。
しかし鬼までの道のりが長かった・・・2時間半休憩なし。
途中何回か意識がとぎれました。

今までの鬼文献で散々勉強していたはずなのに、どうもストーリーが解せません。みんな挙動不審すぎ。阿部貞任は妻も母も死ぬ羽目になったのに大事な一振は義家に返しちゃうし、様々策を練った義家も弟宗任をあっさり解き放つし、もうこの人たち一体何がしたいのさ。

袖萩のところは歌舞伎の方が良かったなぁ。自害したときの大げさな振りが苦手です。

後半「一つ家の段」はすごかった。鬼女・岩手が恋絹の腹を引き裂くとこなんざスプラッター。お腹の中身まで出てくるとは思わなかった。ここはほんとに国立劇場なのかと目を疑いました。さらに出てくる人出てくる人みんな「実は・・・。」っつって正体をばらしていくからもう何がなにやら全く。でも面白かった。できれば袖萩んところは短めで岩手中心の再演を望みます。

鬼的感想としては、岩手は終始一貫してお家再興のために手段を選ばなかったということはわかった。むちゃくちゃやっているけど本人からすれば全てがお家のため当然・必然のことだったのかも。そこに我欲・妄執は微塵もないわけで、そういう意味では岩手は鬼ではないと思います。

元ネタではお主の娘を助けるため知らずに自分の娘を手にかけてしまったことから狂女となり、鬼と呼ばれることになります。


「陸奥の 安達ヶ原の 黒塚に 鬼こもれりと 聞くはまことか」

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「悪霊列伝」「続悪霊列伝」 永井路子 

永井路子大好き~。彼女の歴史小説は昔から好きで結構読んでました。特に古代のお話がロマンティックで良いです。「噂の皇子」「裸足の皇女」など。短編なんだけどな。
あと藤原道長の「この世をば」も面白かったなぁ。中学生の頃に読んだきりだが。
で、きずな書房でみつけた本、「悪霊列伝」「続悪霊列伝」。
ここの古本屋さんは歌舞伎本も多いのですが、どれもちょっとお高め。でもこれは2冊で1000円。私にとってはとてもお得でした。

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悪霊といえば崇道天皇・菅原道真・平将門・崇徳天皇などです。この中で一番最も害を及ぼしたのは優等生の菅原道真です。著者がいうには「死後の祟り」は生前の性格よりもその死に関与した人間の後ろめたさに因るものと言っています。

無実の人間を葬り去れば去るほどその後の祟りは大きくなるということです。
「祟り」なんてそもそも後の人々が勝手に意味付けるわけですからねぇ。

歴史小説の名手が書いたものだけに、事実かどうかは別にして叙情的というか著者の思い入れが強くって面白いです。

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「怪異の民俗学 鬼」 小松和彦編集

いろんな鬼関連の文章の寄せ集めです。
馬場あき子も載ってます。

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その他に「天狗と山姥」も購入。

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「日本の幽霊たち」 安部正路

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1000円ぐらい。箱のデザインがすばらしい。小宮山書店にて。

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「鬼と天皇」 大和岩雄

これも最近のテーマの一つ「鬼」についてです。八瀬童子という天皇の輿丁として従事した、「鬼の子孫」と言われる人々が気になっているのですが、そのものズバリの内容のようです。ネットで見つけて、「日本の古本屋」で買いました。

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なんとまあ、独特な表紙です。

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「女人蛇体」 堤邦彦

今の興味に対象ど真ん中の本を見つけました。新宿ジュンク堂にて。「女人蛇体ー偏愛の江戸怪談史ー」

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表紙に使われているのがあの清姫ですね。芳年作「清姫日高川に蛇体と成る図」というテーマそのまんまです。帯の「逃げる男、追う女」というコピーがまたそそる。早く読みたい!

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新宿古本市にて「芳年妖怪百景」

引き続き古本市での戦利品。

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芳年のほうが安かったような記憶。状態はどちらもいいです。ほぼ新品。芳年は暁斎よりも近く、よりリアルというか劇画タッチな人物描写だと思います。女性は相変わらず浮世絵風の面長切れ長なのに、男性はいきなりヒゲなど細かくてどうしてこういう描写の違いが出てくるのか不思議です。太田美術館でみた清姫は芳年作。この本にも二種類の清姫が載っています。ステキ。暁斎はアル中ですが、芳年は神経衰弱だったそうです。画風の異常な細やかさから見ると分裂病だったのではないかと勝手に想像しています。

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新宿古本市にて「暁斎妖怪百景」

新宿古本市ヒットやわ。

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面白いでっす!酒飲みの絵だ。すごいのは仮名垣魯文の依頼で書いたという新富座の引き幕です。酒飲んで四時間で仕上げたと解説にあります。色々な妖怪が書かれていますが、それが当時の役者に似せて描かれているらしいです。ろくろ首の九代目団十郎や化け猫の八代目岩井半四郎はまだ許せるとしても、「化け蝦蟇の下にいる腐乱死体のような妖怪」(解説より)にされた五代目小団次とかとても人気俳優とは思えないドロドロさです。さすが酔っぱらい。絶対あとでクレーム来たと思うわ。

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古本「鬼の研究」 

「地獄の思想:梅原猛」に続く、私のイチオシ「鬼の研究:馬場あき子」。
神保町を巡っていたら古書モールで単行本を見つけました。1000円也。
すでに角川文庫バージョン、ちくま文庫バージョンを持っているのですが買ってしまいました。だってこのデザイン。箱入り。なんど読んでも新しい発見があります。人間がよくわかる本。
箱。

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背表紙。

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見返し。

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ちなみに角川文庫の表紙はコレ。

Oni


 

どんだけ鬼なんや。

 

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